私が競書誌『ペンの光』の規定部で準師範になれたのは、2021年11月でした。
準師範から師範になるためには、年に1回の師範試験に合格しなければなりません。
不安ながらも「2022年は師範試験に挑戦する」と決め、自分なりに努力してきました。
この記事では、師範試験の受験に至るまでの思いや、実際に課題の練習を始める前の準備段階について、細かく書き残しておくことにします。
※実際に提出した作品は、次の記事で紹介します
師範試験を受けるに至った理由
①規定部師範になることを目標としていた
以下、自分語りが長くなりますので、興味のない方は先へ読み飛ばしてくださいねm(_ _)m
日ペンのボールペン習字講座を終え、ペンの光で引き続き学んでいくと決めたときから、規定部師範になることは遠く大きな目標としていました。
独学で日ペン師範になった憧れの先輩方のブログやSNSの投稿を何度も読み、
と、たくさんの勇気と希望をいただきました。
独学で競書誌に出品、ましてや師範を目指すだなんて、先達なしには思いもよらなかったことです。
級位の頃は、昇級の予想を立てて、いつ試験を受けいつ師範になれるか、逆算などしていましたっけ・・・。
↑今振り返ると、ギラギラしていた数年前の自分が恥ずかしいですorz
②後悔とコンプレックスを克服したかった
浅く広くになりがちで、一つの物事になかなかのめり込めない私。
夫にも「珍しくペンだけは続いてるね」と言われるくらい、まあ飽きっぽい性格です。
大学時代には、ペン字とは全く別ジャンルの、とあるサークルに所属していました。
もちろん自分が好きでやりたい内容で、楽しんで活動していました。
ただ、サークルと言えども部活並みに本格的でハード、練習後や休日にも残って自主練するのが普通という環境でした。
私はというと、サークルの活動自体は楽しいけれど、他の時間を犠牲にしてまでは熱中できない・・・
素直に1つのことにのめり込める人が羨ましいし、そうなれたらいいのに・・・
という苦しい気持ちも抱えていました。
それと同時に他にやりたいことが見つかり、一時期サークルから離れた期間がありました。
結局また戻ってきましたがブランクは大きく、もっとあの時本気で向き合っていればと、少しの後悔が残り続けました。
そして、この先のめり込めそうな何かに出会えたときには、本気で向き合い高みを目指したいと考えるようになりました。
──約10年後、新たに出会いのめり込めたものが、ペン字でした。
師範になる過程で、コンプレックスも克服したい。
単に字が上手くなりたいという理由だけではなく、内面的なものが大きな原動力となり、本気でペン字を続けて来られたのだと思います。
③最短で規定部師範を目指したかった
ペン字を始めてから今日まで、ペン字に多くの時間を費やしてきました。
工夫して時間を生み出したり、他の時間を犠牲にしたり・・・。
あくまでペン字は趣味なので、今のペースをこの先ずっと維持するのは厳しいと感じていました。
規定部師範を一つの目標として、そこまではちょっと無理してもペン字優先で。
無事に師範になれたら、多少ペースを緩めて細く長くやっていこうかと。
息子が小学生になれば、働き方も見直す必要が出てくるだろうというのもあり、卒園前までに最短で師範を目指したいと思っていました。
それに加え、今私は30代後半なのですが、
「30代ではこれを頑張った!」と堂々と言える何かを残しておきたい気持ちもありました。
師範試験は年1回なので、30代のうちに師範試験を受けられるチャンスはあと数回のみです。
万一試験に落ちたときのことを考えると、目の前のチャンスを逃すわけにはいきません。
実力不足は承知ながらも、規定部に関しては早く師範になってしまいたく、受験を見送ることは考えていませんでした。
8月中に書歴と小論文の作成
師範の先輩方から、「書歴と小論文は課題が発表される前から書いておいた方がいい」とのアドバイスをいただきました。
課題の発表はペンの光9月号(8月20日発送)ですが、書歴と小論文は先に準備しておくことが可能だからです。
8月は息子の夏休みで自分の時間があまり取れなかったので、遅くとも8月中には両方終わらせるとの目標を立てました。
書歴(8月中旬)
まずは、スマホのメモ帳アプリに書歴を書き出してみました。
全て記載しようとすると細かく読みづらくなりますから、わざわざ書くメリットを感じなかった部分は省くことにしました。
具体的には、
- 昨年、一昨年のペン展の受賞歴
- 硬筆検定2級合格
・・・などですね。
書く内容が決まったら、下敷き作りです。
師範の先輩方からのアドバイスを参考にし、扁平にバランス良く収まるように細かく調整していきました。
今回初めて書歴というものを書いたわけですが、今年のペン展の賞を記載したら一気に見栄えがしました。
小論文(8月下旬)
原稿用紙エディタで、改行位置なども意識しながら推敲していきました。
題名と氏名を入れるか、一行目から本文を書き始めるかで迷い、SNSで質問させていただきました。
師範になられた先輩方は、どちらのパターンでも合格されていることが分かり、「題名・氏名を入れても入れなくてもどちらでもOK」という結論に至りました。
私は最初入れずに書いていましたが、入れたほうがひと目で分かりやすいだろうと思い直し、1行目に題名、2行目に氏名、3行目から本文としました。
8月31日に仕上がり、ギリギリ目標達成です。
小論文と並行してWEB展の練習も開始したので(遅)、毎日わちゃわちゃしていました。
師範試験の課題発表と答案用紙注文
書歴と小論文で慌ただしくしていた8月下旬にペンの光9月号が届き、規定部師範試験の課題が掲載されていました。
受験資格、出品書類、課題も例年と同様でした。
真っ先にしたことは、答案用紙の注文です。
師範試験答案用紙
B5版 1組363円
【セット内容】
・白紙20枚(第1問〜3問用)
・第4問と第5問各5枚
・原稿用紙5枚
専用の原稿用紙がないことには小論文の清書ができませんので、早急に。
8月23日に3組注文し、26日には受け取りました。
オンライン講習会の受講
試験対策のために、地区講習会かオンライン講習会のどちらかは申し込むつもりでいました。
両方とも受けたことがある経験上、オンラインよりも直接指導していただけモチベーションも高まる地区講習会の方に行きたい気持ちがありましたが、開催は10月でした。
出来るだけ早く添削していただきたかったのと、先の予定もあやふやだったのとで、8月25日にオンライン講習会に申込みました。
9月1週目には資料が届き、9月5日にはまずは最後まで視聴しました。
試験対策だけあって、
- 〇〇というのが観点
- 〇〇を心がけて書いていただきたい
- 〇〇については減点になる
といったような、具体的なお話が盛りだくさんでした。
集字・草稿・切り貼り手本・下敷きの作成
師範試験も昇格試験と同様に、課題は活字でお手本はありません。
それだけでなく、第1〜3問は罫線のないB5サイズの白紙の答案用紙です。
オンライン講習会でも会長がおっしゃっていた「布置を適切に考えて書く」ということが難しく、はてさてどうしよう・・・と困惑しながら試行錯誤の日々がスタートしました。
字典からの集字は必須、草稿または切り貼り手本も課題に応じて準備。
昇格試験の時と同じくPCは「Apple MacBook Air」、画像編集ソフトは無料の「GIMP」、スキャナ付きプリンターは「Canon PIXUS TS8230」を使用しました。
前準備①:字典やテキストからの集字
8月後半から空いている時間に少しずつ、課題に出てくる漢字を字典などからスキャンし、PCに取り込んでいきました。
一字ずつ画像として保存し、あとから貼り付けていきます。
日ペンの師範になるための試験ですから、日ペンの『硬筆新字典』は必携です。
前準備②:模範作品を拡大印刷
ペンの光1月号に、第1問〜第3問の模範解答が掲載されています。
そこで、レイアウトを参考にするために、実物大に印刷しました。
方法は、
- 模範解答をスマホで撮影し、余分な部分はトリミング
- スマホとプリンターを接続し、B5用紙に印刷
正確なサイズではありませんが、倍率を考えることなく、手軽に拡大印刷できました。
第1問:切り貼り手本作成
この形式で三体を書くのは初めてです。
下記を意識しながら、均等になるよう下敷きを作っていきました。
- 単語と単語の間は広めに
- 楷書と行書、行書と草書の間は広めに
- 上下左右は余白を十分とって
一発でバランスよくとは行かず、何度もやり直して時間がかかってしまいました。
ようやく下敷きが完成したところで、文字画像を重ねていきました。
草書ですが、オンライン講習会の資料の中に、師範試験第1問に出てくる全ての草書が書かれていた資料がありましたので(ものすごくありがたい!)、そちらを参考にしました。
第2問:集字と草稿作成
PCで切り貼り手本を作ると、流れなどが不自然になりそうだと思い、自分の字で草稿を作ることにしました。
下敷きは、模範解答と同様に7行で作成したら、大体ちょうどよく収まりました。
改行ですが、各行の文字数を揃えるのではなく、不自然にならずに読みやすい位置で改行するようにしました。
漢字と連綿の画像は参照しやすいように、12マスの国語ノートをスキャンしたものに貼りつけ、印刷しておきました。
『硬筆新字典』に載っている「独」の行書ですが、楷行が「独」で、草行が「獨」でした。
なんとなく旧字体「獨」の行書がしっくりこなかったので、『三上秋果の常用漢字硬筆字典』の草行「独」を採用しました。
第3問:集字とざっくり草稿
第3問は、お手本を作ることは手間も時間もかかるのでしませんでした。
必要な漢字・アルファベット・数字を、12マスの国語ノートをスキャンしたものに貼り付けるだけにしました。
次に行数は、模範解答同様8行にしたら、ちょうどよく収まりそうでした。
あとは実際に文章を書きながら、どこで改行するのがベストか考えていきました。
- ローマ字や数字は2行に分かれないように
- その他の単語も極力分かれないように
- なるべく助詞が行頭に来ないように
・・・どうにか不自然に分かれることなく改行できました◎
改行位置さえ決まれば、あとは書きながら徐々に修正していけばOKです。
第4問:お手本をコピー
第4問は添削指導を行う課題ですので、他の課題のようなお手本や下敷き作成は不要でした。
その代わりに、「学年習字」と「ペンの光」から、対応しているお手本のコピーを取っておきました。
- (1)「ゆっくり増加」→2022年4月号「学年習字」に掲載
- (2)「しめやかに降る春雨」→2022年4月号「ペンの光」に掲載
なぜ私が購読していない「学年習字」を持っていたかといいますと、ペン展会場に置かれていた見本誌を、何気なくいただいていたからです。
どちらの課題も注意点が細かく書かれていますので、添削するときには非常に参考になります。
第5問:切り貼り手本作成
第5問の答案用紙をスキャンしたものに、字典から集字した文字画像を貼り付けていきました。
日ペンの『硬筆新字典』は、旧字体と書写体が同じ列に書かれているので、どちらか判別しづらいです。
旧字体と書写体を間違わないようにするため、旧字体と書写体の列が分かれている、桃花会の『改訂 よく使う漢字の書体と筆順字典』と見比べチェックもしました。
「ね」の元の漢字は字典から見つけられなかったので、へんとつくりを組み合わせて一つの漢字を作成しました。
第1問〜第3問は添削へ
第1問〜第3問は、添削を受けたいと考えていました。
教室に通われている方だと、何度も先生に見ていただき、支部内での合格をいただいてからようやく出品・・・なんて話も聞きますので、一度も見ていただかないということには不安があったからです。
オンライン講習会で2点添削していただけるので、残り1点は個別通信添削指導(ペンの光2,5,8,11月号に掲載)をお願いすることにしました。
一番自信がなかった第2問は毎回個別添削をお願いしている先生へ、第1問と第3問はオンライン講習会分として事務局へ郵送しました。
- オンライン講習会の添削:9月9日投函→9月26日返却
- 個別添削:9月16日投函→9月27日返却
師範試験に取り組み始めてみて
ペンの光独学で個人出品だと、書き始める前の準備の段階がとにかく大変です。
ほんのちょっとしたことで、「これでいいんだろうか?」と悩んで立ち止まっての連続でした。
「実際に書く」以外の部分に多くの時間を取られ、なかなか練習にたどり着けないもどかしさもありました。
さらに、一度お手本や下敷きを作ったら完了ではなく、書きながらおかしいと感じたら、何度か作り直してバージョンアップもさせてきました。
調べて、自分の頭で考えて、試行錯誤して・・・。
余分な時間を費やしたように思えても、全て自分の糧になったはずです。
さいごに
長くなってしまったので、今回はここまでにしておきます。
試験の結果が届いたら、合否と共にまた続きを書く予定です。→書きました!
最後までお読みくださりありがとうございました♪